「ビールはまずい」逆境から這い上がったCOEDOビール「進化」の過程

「クラフトビール」という言葉が当たり前のように存在し、スーパーやコンビニなど多くの店舗で取り扱われている近年のこの状況を誰が想像出来ただろうか? 1994年、かつてのクラフトビールである「地ビール」はブームと言われるほど大人気だったが、職人不足や作り手の経験の足りなさから満足な品質を維持することが出来なかった。そのため、「まずい」「値段が高い」などネガティブな印象を植え付けて、その後、地ビールの流行は衰退してしまった。 そんな中、コエドブルワリー協同商事 代表取締役社長の朝霧氏は「ビールは素晴らしい」、「Beer Beautiful」という想いを10年以上丁寧に伝え続け、今ではクラフトビール好きなら知らない人はいないほどの有名ブランドに成長した。 「ビールはまずい」という偏見からの大逆襲。朝霧氏は一体どのようにして、COEDOビールをここまで成長させたのか?SAKEDARAKEの独占取材で、その答えが明らかになった。

アグリベンチャーであることの価値

サケダラケ
サケダラケ
会社の立ち上げのきっかけはなんですか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
元々は農業の会社で、それは今も続いています。最近はアグリベンチャー(最先端のテクノロジーを使用した次世代の農業のベンチャー)という言葉も聞かれるようになりましたよね。流通系ですけど、我々もアグリベンチャーのような感じです。そんな中で作られた初めてのビールは1996年にさつまいもを副原料で使ったビールでした。今も紅赤(べにあか)としてそのビールの個性は引き継がれています。
サケダラケ
サケダラケ
アグリベンチャーというと具体的にどんなことをするのでしょうか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
フランス産の牛乳やぶどうは日本で食べたことなくても、カマンベールやワインはありますよね。これが農業なんです。付加価値が高いと輸入され、購入される。こういうのが当社のもともとの事業哲学としてあります。その農産物を配給するだけでなく、一次産業がメーカーのように加工していくことや、それをより生産者側が取り込んでいくということが大切。例えば単純な話だけど、白菜農家が白菜だけを売っても単価だって知れてますよね。それを、名人芸でキムチを作ったらどうだと、また、メーカーさんに出すんじゃなくて、自分たちがブランドホルダーとしてやると、美味しいキムチを出すのが本業になったりして。これを今の国の政策では6次産業化と言います。このようなことをいち早くヨーロッパの経済から学びました。一次産業だけだと、どうしても相場に流されたりする。でも6次産業なら経営が安定して、それが形になっていくのが私たち協同商事。だからビールも農産物だし、ワインも農産物だと言っています。
サケダラケ
サケダラケ
なるほど。ビールが農産物という発想はあまり無かったので、目からウロコです。
朝霧重治社長
朝霧重治社長
最近は多くの方がクラフトビールっていう言葉自体が耳に馴染んでいて、都市部の人たちにとっては身近な存在になってきてますよね。なので、私たちはその食文化のことについてもっとお伝えしたいな。と思っています。

逆境に打ち勝つためのリブランディング

サケダラケ
サケダラケ
2006年には「小江戸」から「COEDO」にリブランディングされましたが、これにはどんな理由があるんですか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
本来は別のブランド名にしようと思っていました。埼玉の人だと「小江戸」というと川越だとすぐに浮かびますけど、関西や東京の人はすぐに思い浮かばないですよね。日本では初期地ビール期は「観光地の土産物」というイメージで地域性が全面に出た形でしたが、私たちがお伝えしたかったことはビールの職人性でした。地域が第一に連想される「小江戸ブルワリー」ではなく、結果的にはルーツの説明にもつなが る形でカタカナの「コエドブルワリー」、アルファベットの「COEDOBREWERY」としました。海外進出にも相性が良かった。ワインみたいにテロワールが伝わるような名称っていいですよね。
サケダラケ
サケダラケ
歪んだ形と言われましたが、当時の地ビールは人気が無かったんですよね。その点は苦労されませんでしたか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
苦労ではないけど、やっぱり一番厳しかったのはCOEDOを作り始めていた当時。今では信じられないと思うけど、マイクロブリュワリーや地ビールはものすごい社会から馬鹿にされていたんですよ。1から知らないわけでもなく、フラットでもなんでもないんですよ。でも、丁寧にお話をしていくと分かってくれるから、一つ一つ解決していくしかない。苦労ではないけど、まぁ厳しいですよね(笑) すごい逆境だったけど、変えていけると思ったので。辛くはないんですよ。本当に自分たちの努力で変えられることだとは思います。
サケダラケ
サケダラケ
逆境からのスタートだとかなり大変だと思いますが、実際にどのように変えていきましたか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
本質的に本当にそうだったらしょうがないと思います。ですが、本来そんなことないじゃないですか。きちんとした原料、職人、道具を組み合わせると、パティシエやシェフと同じような職の職人道っていう世界を追求していけるわけですね。誰だってミシュランの3つ星レストランとファミリーレストランを比べませんよね(笑)それをぐしゃぐしゃっとよく分からない中で話をすると、「地ビールなんで...」っていう話になってしまうので。 知ってほしかったのはやっぱり我々、協同商事っていう会社が農業や食の世界で行き過ぎた価格と効率の追求ってことだけじゃなくて、本来食が持ってた職人的で、ゆっくり作られてて、適正な価格で売られている。そして、誰も泣かないということですね。でも地ビール当時は説明の仕方をきっちりとしていなかったという反省点はあります。

「ビールは素晴らしい」を伝えたい

サケダラケ
サケダラケ
事業の中で、今一番大事にしていることや、これだけはしないということはありますか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
ビールメーカーとして、我々が揺らがないものとして持っているのは「ビールは素晴らしい」「ビールは面白い」っていうところが本当にこの活動によって伝わっているだろうか?という点を第一に考えますね。ビールの本来の姿を説明することがミッションです。 ビールは他のお酒などに比べてすごく自由度が高いので、創造性が発揮出来る。そういう発展系ってやっぱりビールならではですね。こういった嗜好品とかクラフトビールの世界っていうのは、私達作り手自身にとっての究極のユーザー体験だと思います。
サケダラケ
サケダラケ
自由度が高いと言えば、2020年7月15日に発売されたNECコラボの商品はとても新しくて人気が高かったですね!
朝霧重治社長
朝霧重治社長
ああいうのは今だからこそ出来る商品ですね。やっぱりAIだとか、ITのテクノロジーが発達した今、そして同時にビールの多様性を受け入れる生活者の人たちがいるっていうこの2つが揃ってこそです。設計したテーマ設定がなかなか面白くて、20代の方が好きなビールじゃないんですよね(笑)20代の人たちの雰囲気を表現するとこんな感じですねっていう。でも、それなりに納得してくれて。あっという間に売り切れましたね。
サケダラケ
サケダラケ
今回のように消費者により寄り添ったような商品はもっと出てきそうですね。
朝霧重治社長
朝霧重治社長
一方で我々はやっぱりプロなんで、完全に御用聞きにはなれないんですよちょっと先をゆくご提案をしていくということで楽しんでいただきたい。従来のマーケティングという世界ですと、定量的なデータを元にマーケットインのプロダクトを作るのが一般的だと思うんです。 そこの領域は僕たちではなく、他のメーカーさんにお任せして、僕らは「こんなの思いついちゃったんだけど、どう?」みたいな。まさにプロダクトアウトですね。なので、今まさに紅赤と同様に食材としての質がよいのに、捨てられてしまう、かぼちゃをビールとして新しい価値に生み出す事をしています。

知られざるCOEDOビールの裏話

サケダラケ
サケダラケ
まだ公開していないCOEDOの裏話ってありますか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
製造に関しての秘話はなんかいい意味で分かりやすいやつはないかも知れないです(笑) でも例えば、日本って欧米と違って自然水にこだわる傾向があって、そこは日本人の精神性かもしれないですね。自然崇拝のような。その点で言うと、COEDOは天然水なんですよ。実は、井戸を掘ったんです。天然水じゃないといけない理由何一つないんですけど、科学的に考えても水は調整出来るので、でもなんかそうじゃないんですよね。 あと、みんな知らないんだけど「中硬水」なんです。秩父って海底が隆起した山脈なので、セメントが取れてるんですね。硬水のミネラル分は酵母への補給源になります。ヨーロッパもビール造りには硬水が使われていますよ。
サケダラケ
サケダラケ
中硬水だったのは驚きました!その水を利用するために、井戸も掘られていたんですね。他にはどんなことがありますか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
実はここ(埼玉松山市にあるCOEDO醸造所)に移転してきた時、酵母を前のブルワリーから持ってきたんですけど、その酵母が活性を失っていて、最初に作ったビールが上手く発酵しないで失敗したことはありました。そういうのは、泣く泣く廃棄したこともありましたね。ビール作りは難しいですね。

ビールが苦手な人は、何が苦手なのかが分かれば好きになる

サケダラケ
サケダラケ
20代前半ってビールに苦手意識を持っている人がまだ沢山いると思うのですが、朝霧社長はどうしたらそういう層でもビールを好きになれると思いますか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
良きメンターがいるかどうか。要は良い飲み手がいるかどうかですよね。 そういう属人的なことに委ねるってことでなければ、ビールを自然に楽しむ出会いの場って言うのをより作っていくのが私たちの、ブルワリー側の責務だと思いますね。男女の味覚差って本来そんなにあるものではないんですけど、生物学的に女性の方が危険に対して敏感なので。ビールが嫌い=苦味が嫌いっていう人は多いと思うんですけど、苦味だけがビールの個性じゃないんですよと伝えるのもいいかもしれないですね。無理して糖類を足した甘いカクテルよりも、全体のバランスが取れて、自然に発酵によって生まれた旨味や甘味の要素が美味しいんじゃないかなと思います。炭酸がだめなのか、苦味がだめなのか、香りがだめなのか。何が苦手なのかを分かることが大事ですね。
サケダラケ
サケダラケ
確かに苦手だと聞くだけで、どんな部分が苦手なのかまではヒアリングしていませんでした。ぜひ参考にさせていただきます! 私も最初苦味が苦手だったのですが、実は飲んでいくうちにいつしか飲めるようになったんですよね。苦味に慣れると他のいいところがだんだん見つかるのかもしれません。

1月28日発売の新商品はチョコレートビール!?

サケダラケ
サケダラケ
新発売のチョコレート・デュンケルについて聞きたいのですが、今回コラボされたダンデライオン・チョコレートさんとのコラボの理由はなんですか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
同じクラフトの業界の人たちなんですよね。 Bean to bar(カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行うこと)とか、クラフトビールってアウトプットの物が違うだけでとても似た存在です。ダンデライオンさんはアメリカのbean to barのチョコレートブランドの代表格なので何か一緒にやりましょうとなり、お互いの知見が相乗効果を発揮出来るコラボレーションという形で今回「CHOCOLATE DUNKEL (チョコレート・デュンケル)」を作りました。
サケダラケ
サケダラケ
チョコレート界にもクラフトビールと同じような風潮があるんですね!その他に何か新商品などはありますか?
朝霧重治社長
朝霧重治社長
日本の食生活で冬至にかぼちゃを食べるじゃないですか。COEDOという組織として、農業の会社として、ちょっと傷みが出ちゃったけどカットしたら食べられるかぼちゃを捨ててしまうのはもったいないという点に着目し、かぼちゃをビールにした商品も出します。今年は「インペリアル カボチャパイ スタウト」として今予約販売中です。(※2月3日出荷開始)
サケダラケ
サケダラケ
カボチャパイスタウト!とても気になる味ですね! 詳しくは下の商品をチェック!▼

一陽来復-Ichiyo Raifuku-2021

公式サイトで詳細を見る

最安値

350ml/3本

2,405円

(税込 2,673円)

  • ボディ
  • ミディアム〜フル
  • ビアスタイル
  • Imperial Kabocha Pie Milk Stout(インペリアルカボチャパイミルクスタウト)
  • 発酵方法
  • 上面発酵
  • ABV(アルコール度数)
  • ABV
  • 9.0
  • 産地
  • 日本
  • 原材料
  • 麦芽、ホップ、カボチャ、乳糖、シナモン、バニラビーンズ
  • ブルワリー
  • COEDO醸造所

ー商品紹介ー

冬至の季節ならではのカボチャを使用した黒ビール。バニラビーンズやシナモンなど、飲んだらほっとするような香り高い食材が使用されている。かぼちゃは北海道産の九重栗。ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか?

新発売のチョコレート・デュンケルはどんな味?

パッケージはバレンタインらしい赤とチョコカラーのシンプルかつ可愛いデザイン! 封を開けただけで、ほんのりとチョコの香りが感じられます。チョコの甘さを感じるというよりは、カカオの風味が口に広がるイメージで、黒ビールらしい優しいほろ苦さが良かったです! 黒ビールと言っても、このデュンケルというビアスタイルは後味は苦すぎつつ強く残らないので、食中酒としても料理を邪魔せずに美味しくいただけます。朝霧社長いわく、ステーキのようなしっかりとした味付けの料理とペアリングを楽しむのがおすすめ。全体的にバランスが良いビールなので、黒ビール初心者にも飲んで欲しい1本です! 今回を逃すとまた味わうことができないビール! ぜひバレンタインに友達用・家族用・恋人用・自分用で購入してみてはいかがでしょうか?

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