イギリス人×日本人の夫婦だから作れるビール ─ DSBのマイケルさん・悟子さんにインタビュー

パブ文化が盛んで、豊富なクラフトビールが楽しめる国、イギリス。そんなイギリスで生まれ育った芦川マイケルさん(Michael Ashikawa)がヘッドブルワーを勤めるDistant Shores Brewingでは、妻の悟子さんと夫婦2人で支え合いながらビール醸造所を営んでいます。 母国とは違う言語、環境、文化の中で夫婦二人三脚で運営し、「ここでしか楽しめないビールが飲める」と人気を集めているDistant Shores Brewingのお二人に、クラフトビールを作り始めたきっかけや、イギリス出身のマイケルさんならではの商品のこだわりについてのお話をうかがいました。

日本酒のようなバランスの良さがあるオリジナルのクラフトビール

サケダラケ
サケダラケ
マイケルさんのDistant Shores Brewingで一番人気な商品はどれですか?サイトを拝見したところ、IPA(インディアペールエール)が多いですね。
マイケルさん
マイケルさん
IPAはとても人気ですね。 IPAはバランスの良い苦味。それに、種類豊富なフルーツ風味が作れるので、癖があるビールよりも日本人にとっても親しみやすい味なんじゃないかなと思います。
サケダラケ
サケダラケ
IPAはかなり苦いイメージがあるのですが、DSBさんのIPAは違うんでしょうか?
マイケルさん
マイケルさん
はい。ビールを作る時には自分の中でいくつかルールがあるのですが、その中で一番大事にしているのが「自分が飲みたいビールを作る」ということです。だって、自分が飲みたくないビールは人に勧めないですよね。私のビールは少しドライなビールが多くて、そんなに甘くないんです。それって多分日本酒とも似ていて、ユニークでバランスの取れたビールが好きです。 もともと日本のドイツらしいピルスナーにあまり興味を持てなかったので、今ではイギリススタイルやアメリカスタイルのビールを作ることが多いです。両者の違いはホップの違いです。個人的にはイギリスのホップも好きですが、アメリカのホップのほうがフルーティーで面白いと思っています。
サケダラケ
サケダラケ
「こんにちはマイケルです」など個性的なラベルや名前の商品がたくさんありますが、何か理由があるんですか?
マイケルさん
マイケルさん
ラベルは妻の悟子が作ってくれています。不思議なことに、僕の考えていた以上の素敵なラベルを作成してくれるから、毎回とても驚かされます。外注して同じようなデザインが返ってくるまでは相当な費用がかかりますしね(笑)自分の写真を載せるよりも全然良くて、とても気に入っています。実物はもっとシワのある顔ですからね(笑)
悟子さん
悟子さん
「こんにちはマイケルです」は最初に作ったビールなんです。実はバージョンごとにホップを変えているビールなので、毎回同じ味を楽しめるわけではありません。ボディはマイケルの母国のイギリススタイルのままで、ホップのみを変えているので、違う味や香りが楽しめるようになっています。
サケダラケ
サケダラケ
マイケルさんがビールを作って、奥様の悟子さんがラベルを作ったご夫婦共同制作のビールなんですね!商品を作る際に苦戦した点はありますか?
マイケルさん
マイケルさん
日本は夏になると高温・高湿度なので、そこがかなり大変でした。実はビール醸造所をデザインしている時、そこまで必要だと思わず、メインの醸造部屋にエアコンを置かなかったんです。その代わりオフィスとテイスティングルームにはエアコンを置いてデザインしたのですが、そこが盲点でした。日本の高湿度を理解していなかったので、コントロールが難しかったですね。今では麦芽は除湿機がある部屋で扱ったり、醸造所内を常に清潔にするなど、色々な試作を通して、高湿度でも問題なくコントロール出来るようになりましたが、もし次また醸造所を増やすなら、エアコンは必ず設置しますね。

コロナ禍でもクラフトビールを楽しめるように瓶詰めを増やした

サケダラケ
サケダラケ
コロナの影響で一番苦労した点や変わった点はありますか?
マイケルさん
マイケルさん
コロナ後は瓶詰め作業を増やしました。お客さんがお店に来れなくても、ボトルで同じ味を家で楽しめれば、コロナ中でもいつものような日常を感じてもえますよね。クラフトビールってビール本体だけが大事なわけではなくて、そのビールを飲むバーだったり、仲間と一緒に飲んだり、美味しい料理と食べたりすることが大事だと思っています。ただ、コロナの影響でそれらの行為があまり安全ではない環境になりました。なので、構造所にある広い駐車場を利用して、今ではそこをテラス席にししました。密にならずともビールを楽しんでもらえるように変更して、コロナ禍でも、なるべくいつものようにクラフトビールを楽しんでいただけるようにしています。
サケダラケ
サケダラケ
ボトルの売り上げがいいとのことですが、オンラインショップのほうはどうでしたか?
マイケルさん
マイケルさん
オンラインショップを始めた時はかなり売れ行きが良かったのですが、その後は少し下がり、バーでの売り上げが上がりました。でも、緊急事態宣言があったため、また需要が上がるのではないかなと思ってます。そのためにもボトルをもっと作って行かないといけないですね。あとは酒屋での売り上げが好調になってきました。クラフトビールをあまり知らない人でも、ラベルや種類などを見て購入してくれる人がいるので、コロナ禍でも酒屋を通じて人と人が繋がっていくんだなと感じました。
サケダラケ
サケダラケ
酒屋を通じて新しいお客さんと繋がれるのはとてもいいですね!
マイケルさん
マイケルさん
そうなんです。実はコロナが流行する前にはビールイベントに参加したこともあって、その時には初めてクラフトビールを飲んだ人がとても気に入ってくれて、私たちのビールを購入してくれたことがすごく嬉しかったです。初めて飲んでもらった人たちの驚いた顔は忘れられないですね。私もつられて笑顔になります。
悟子さん
悟子さん
クラフトビール好きの人は遠くから来てくれますし、ローカルのクラフトビールを飲んだことがない方も来てくれます。東村山という立地的に豊島屋さんという有名な酒屋があるので、日本酒飲んだ後にビールを飲みに来てくれる人もいます。毎週日曜日にオープンしているテイスティングルームでお客さん同士が知り合いになって、常連さんが新しい人と仲良くなるので、みんな楽しんでいってくれています。コロナ禍になってからは、醸造所にある広い駐車場を利用して、今ではそこをテラス席にしたので、密にならずにクラフトビールを楽しんでもらえています。

夫婦2人で言語の壁を超えてオリジナルクラフトビールを作り上げた

サケダラケ
サケダラケ
会社名(Distant Shores Brewing)の理由はなんですか?
マイケルさん
マイケルさん
名前を考えるのは本当に大変でした。何か使いたい名前があっても、世界中のどこかの醸造所で使われているので... カフェで何日もただ名前を考える日々があったのですが、何千ものアイディアの中から浮かんだことがありました。 イギリスビールはインドに輸出されていたのですが(IPAが出来た理由)、それが私の人生にも関連していたことに気づいたんです。ロゴの半分になっている丸は、世界のうちの半分であることや、海岸を表しています。悟子の友人がデザインを作ってくれたのですが、何十個もデザインを作ってもらい、遠くから見ても分かるくらいシンプルで素敵なデザインでとても気に入っています。
サケダラケ
サケダラケ
母国のイギリスでビールを作ったことはあったんですか?
マイケルさん
マイケルさん
最初にビールを作ったのがイギリスのビール学校へ通っていた時でした。12人で12週間の講習を受けました。色々学んで出来上がったビールは家族や友達にあげたり、ビールのイベントや、学校の隣にあるパブで配ったりなどして楽しみました。でも、私自身はビールの会社に勤めることはなかったので、自分が作ったビール醸造所は日本が初めてです。
サケダラケ
サケダラケ
奥様の悟子さんも元々ビールを作りたいと思っていたんですか?;l
悟子さん
悟子さん
(首を横に振る悟子さん)。実は、全然興味はなかったんです(笑)。最初にベルギーでベルギービールを飲んだけどあまり好きではなくて、クラフトビールはまずいものだという先入観を持っていました。 でも、日本に返ってきてから初めてIPAを飲んだらこんなに美味しいものがあるんだと驚いて、そこから好きになりました。そうすると、だんだんどの種類だと好きなのか、嫌いなのかが分かるようになってきました。その後もマイケルに色々なクラフトビール屋さんに連れて行ってもらって。今では普通のビールよりも、積極的にクラフトビールを飲んでいます。
サケダラケ
サケダラケ
もともとクラフトビールに対して苦手意識があったことは驚きました!マイケルさんのおかげでクラフトビールが好きになったんですね。日本で何か言語に関して困ったことはありますか?
マイケルさん
マイケルさん
醸造所を作る時ですね。もともとビールの作成方法などはアメリカやイギリスにとても多く書類があるので、ビールを作るのは簡単でした。しかし、税金の管理や、細かな申請などは英語での対応がないため、厚いバリアのように感じられました。そんな時に悟子がとてもサポートしてくれました。
悟子さん
悟子さん
言語で困っているのは私のほうですね(笑)でも日本人は外国人、特にイギリス人に甘いので全然大丈夫でした!
サケダラケ
サケダラケ
最後の質問になりますが、今後はどんなことをやりたいですか?
マイケルさん
マイケルさん
小さいビール醸造所を持ちたいですね。地元の農家さんと繋がったり、ソーラー発電や風力発電を利用して過ごすような場所で。山に近いところでキャンプなどが出来るところがいいですね。都会からの避難所のようにしたいです
悟子さん
悟子さん
ビアフェスがどうしても出来ていなかったので、いつも参加させてもらっている府中の神社の中でやるビアフェスや筑波・東村山のお祭りなどを始め色々なイベントに参加したいです。もし開催されるなら、オリンピックに関わることもやってみたいですね。

これからも夫婦でクラフトビールを作り続ける

マイケルさんが出来ないところは、妻の悟子さんがカバー。悟子さんが出来ない苦戦する部分は、夫のマイケルさんがサポート。お互いの得意分野を生かしたクラフトビールは世界中どこを探しても、ここでしか味わえません。 インタビューの際、お二人で仲睦まじく笑顔で話しているのがとても印象的な素敵なご夫婦でした。 東村山のほうに寄った際は、ぜひDistant Shores Brewingのクラフトビールを楽しんでみてはいかがでしょうか?
『Distant Shores Brewing』 住所:〒189-0001 東京都東村山市秋津町3丁目14−2 電話番号:042-306-4242‬ 営業時間:月〜金 9:00〜16:00 / 日 11:00~18:00(ボトル直販+テイスティングルーム) 定休日:不定休
※新型コロナウイルス感染拡大により、店舗の営業内容が一時的に変更になる場合があります。最新情報については店舗まで直接お問い合わせください。

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